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タシの心霊体験談

第2回 赤い百合の花 -前編- 体験者:柴崎初美さん 40歳
千葉県流山市 パート勤務

赤い百合の花

私と夫が10年前に体験した出来事です。

当時はまだ結婚したばかりで、お互いに恋人気分が抜けきらず、週末毎に2人でドライブへ出掛けていました。その日は夫の仕事の代休日で平日だったのですが、私もちょうどパートが休みだったため、「ちょっとどこかへ遊びに行ってみよう」ということになったのです。横浜や湘南、房総などの海沿い定番コースには少し飽きていたので、山の方へ行ってみようということで決まりました。それで関越道に乗ってしばらく走り、適当な所で一般道へ降りて、観光マップで調べながら景観の良い名所を色々と巡ったのです。

そのうちに温泉街を走る道に入って、「明日、仕事がなければ、どこかに泊まるのになぁ」なんて言い合いながら、町の外れの方まで進んでいきました。私の見ていた地図ではそこを通り抜けると、別の国道にぶつかるはずだったのですが、行けば行くほど道路が狭くなって、しまいには山道へ入り込んでしまいました。彼もナビで確認していたのですが、どういうわけが急に動作がおかしくなって、現在位置が分からなくなったと言い出しました。そこですぐ前方に見えたガード沿いの空き地に車を停めました。

時刻は午後4時過ぎ、初夏の頃だったのでまだ十分に明るかったのですが、当初の予定より遠出になってしまったこともあり、「このまま無駄にうろうろしていたら、帰りが夜中になる。大人しくUターンして分かるところまで戻ろう」ということになりました。で、彼が発進しようとしたその時、車窓越しの眼下に見える景色にふと目が留まったのです。その場所がどのくらいの標高だったのかは分かりません。低い山の中腹辺りという感覚はありました。空き地の脇から伸びた急な下り坂の向こうに瓦屋根の家が数軒建ち並んだ集落のようなものが見えて、その前に畑が広がっていました。周囲は全て山です。

「わっ、きれい!」
畑の一角から一軒の家に至る一面が真っ赤な花の色に埋まっていました。遠目には何の花か分かりませんでしたが、よくよく目をこらすと群生した彼岸花のようにも見えました。

「ねえ、今頃って彼岸花って咲く?」
「さあ、よく分からないけれど、それって8月とか9月の花だろう?彼岸花ってくらいだし」
「そうだよね。何の花かなぁ」
「いや、初美。今、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないぞ」

その声がやけに焦っているのに気づいて運転席へ目を移すと、彼が車を相手に悪戦苦闘していることに初めて気づいたのです。盛んに首を傾げながら何度もエンジンを入れ直すのですが、キュルキュルと変な音がしてすぐに停止。ガソリン満タンで出発したことは知っていたので、私も焦りました。

「もしかしてバッテリー?」
「それが、よく分からないんだよ、そういう表示もないし。あとバッテリーが凍るのは冬じゃないのか?」
「試しに前を開けて見てみたら?」
「おまえ、俺がメカ音痴なの知っているだろう。見たって分からないよ」

そうなのです。私の夫は男性には珍しく機械の類いが苦手で、今でこそパソコンとスマホくらいは使いますが、当時は携帯のメールさえ満足に打てないという人でした。車に関してもただ運転するだけで、整備の知識は皆無。エンジン部分を見たところで、エンストの原因を突きとめられるはずがありません。

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